博士の愛した数式

博士の愛した数式 (新潮文庫)

　80分しか記憶が保たれない数学者と、家政婦親子との交流の物語（本のうらがきには「あまりに悲しく暖かい、奇跡の愛の物語」と書いてあるが、これはミスリードだろう）。
　読前に想像していたよりはおもしろかった。これは80分しか記憶が連続しないという設定と「江夏」という記号の勝利だろう（暴力団との繋がりや薬物の問題を起こすなど、決してクリーンではない、それでいて絶対的なヒーローなどそういるものではない）。ただ、これが映像に向くかと問われると、少々頸をひねらざるを得ない。体中に貼られたメモ用紙や、あまりに“いい子”な息子など、絵にしやすい話だということはよく分かるが、それ故に映像にした瞬間に陳腐化してしまわないかが少々心配。